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手変りについて
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 手変りとは、一般に同じ製造年でデザインの違うものと定義 されていますが、どの程
度の違いが有れば、手変りと言うのか定説が有りません。


  手変りの一例を次に示します。これは全て、昭和56年製の10円銅貨を示したもので
す。手変りとしては、屋根の軒先に、凹型の●が有るか、無いかの違いが見られます。

 昭和56年製の10円銅貨

  現行貨幣は、毎日手にしている身近な貨幣だけに、注意して見ていくと、新しい収集
の楽しみ
が生まれるかもしれません。

 ここでは、下記の文献等を参考にして手変りについて考えてみます。
           
              日本のお金・・・・・・大蔵省印刷局
                  日本貨幣カタログ(1994)・・・・日本貨幣商協同組合
              日本の貨幣(収集の手引き)・・・日本貨幣商協同組合
                  造幣局百年史・・・大蔵省造幣局
              造幣100年・・・・・・造幣局泉友会


 
貨幣のデザイン原案は、国民各層に末永く親しまれることを願いつつ、貨幣の模様を
プレス(圧印)したとき、貨幣の模様が隅々まで鮮明にでるかどうか、また、偽造が容易
にできないものかどうか等を考慮して作成される。                
 貨幣の図案は、最終的には
所轄大臣の承認を経て、閣議において決定される。

 このようにして、製造される貨幣に、
手変りは本来あるべきものではない。しかし、同じ
種類、同じ製造年の貨幣に、
全く同じと見られるものは無いと言えるほどである。 

 貨幣の模様をプレスするとき、
極印(はんこの様なもの)が使われる。1個の極印で、
5万〜10万枚程度の圧印が可能と言われており、1年分の10円銅貨を製造するのに、
数千個の極印が必要となる。                          

 
極論すると、極印数(数千個以上)と同じだけ、手変りが存在することになる。もちろん、
数千個以上の手変りと言っても、その違いはミクロン単位で、ルーペ程度では分からな
いものである。

 また、、同じ極印で製造されても、@極印の磨耗の度合い、A極印にゴミ(金属くず)
が付着した、B極印をプレス機にセットしたときの僅かな傾き、C圧印時の圧力差・・・
等によっても、
手変りもどきのようなものが、製造される可能性は無いのだろうか。




極印の製造について

 ごくごく微細な変化も含めて、極印数(数千個)だけ、手変りが存在するとしたら、極印
は、どのようにして作られるのだろう
、文献によると、貨幣の図案が正式に決定すると、

 @図案を基に、油粘土で立体的な
原型(凸型)を作る。直径は、原寸の5〜6倍程度。

 A粘土の原型に、石膏を流し固まったら、油粘土を剥ぎ取る、これを
石膏原版(凹型)
  という。

 B石膏原版をろうに浸し、表面を導電体とするため表面に黒鉛を塗布する。これを硫
  酸銅溶液の中に浸し、電気的な作用により表面に銅の粒子を付着させ、銅による
  膜を作る、そして、石膏原版を剥がしたものを
電鋳板(凸型)という。銅による膜の厚
  さは1〜1.5mm程度である。
      縮彫原版には、当初石膏原版から型取りした青銅系の鋳物を使っていたが、大正13
     年に銅電鋳の技術が取り入れられ、現在に至っている。

      昭和32年に電鋳工程で、従来とかく勘にたよっていた作業を、計測管理に変更

 C電鋳板の表面の耐磨耗性を向上させるため、ニッケルメッキを施したものを、
縮彫
  
原版(凸型)という。

 D縮彫機に縮彫原版をセットして動かすと、他方に取り付けられた鋼材の表面に実
  物の貨幣と同じ大きさに縮小され彫刻される。これを
種印(凸型)という。種印は形
  状を整え熱処理を行う。通常貨幣極印用の種印は、1年に、1〜3個程度と言われ
  ている。
 
     極印を作るための種印は、明治期には模様たがね(明、年、銭 等のはんこのような
     もの)を併用しつつ、手彫りによって製作された。

  
    縮彫機は、明治37年にフランスから輸入されたが、その操作が難しく、貨幣用種印
     の製造に使用されたのは、大正7年の50銭銀貨(未流通貨)からである。
     現在、Aの石膏原版からDの種印までの作業は、コンピューターで行われている。
                   貨幣の製造工程
(独立行政法人・造幣局)

 E種印を使い、円錐形の金属に圧写した、
第1圧写印(凹型)を作る、印面の修正を
  施し、もう1度圧写した
第2圧写印(凸型)を作る。第2圧写印が磨耗すると、種印か
  ら別の第2圧写印を作る。
 
 F第2圧写印を使い、極印の素材にプレスする、これを繰り返し、
1個の第2圧写印
  
種印)から多数の極印を製造する
。極印は熱処理の後印面の研磨をして、極印
  (凹型)
として完成する。 
     
刻印の材料は、従来炭素鋼を使用していたが、昭和21年からクローム鋼に変更

 上記の説明を、まとめると下表のようになるが、どこで手変りができるか、分かった
ようで分からない・・・・すいません。   

種   別 印型 数量(年) 備     考
種   印 凸型 1〜3個 印面の修正あり
第1圧写印 凹型 印面の修正あり
第2圧写印 凸型 第2圧写印で、幾つ位の極印が作られるのか?
極   印 凹型 下表参照 印面の修正?、研磨あり



(参考)10円銅貨の製造枚数、極印数、圧印枚数
(注)極印数は、表極印と裏極印の合計数・・・・単位:個
   極印数、圧印枚数は年度、発行枚数は、製造年

年 度

(昭和)

発行
枚数
極印数
表+裏
極印1個当たりの平均圧印枚数(単位:枚)
大阪本局 東京支局 広島支局
(千枚) (個) 表面 裏面 表面 裏面 表面 裏面
s26年


101,068 24,087 23,714 24,240 33,857 33,015 37,195 35,995
27 486,632 30,518 27,305 25,401 33,556 53,108 32,401 34,747
28 466,300 34,473 30,061 25,857 27,736 28,226 32,878 36,282
29 520,900 31,432 35,034 28,965 26,108 25,018 32,222 34,446
30 123,100 - - - - - - - - - - - - - -
31 - - 586 - - - - - - - - - - - -
32 50,000 1,986 42,333 40,640 - - - - - - - -
33 25,000 2,939 - - - - - - - - 41,318 44,601



- - - - - - - - 41,082 41,973
34 62,400 6,633 34,403 35,634 - - - - 42,565 46,195
35 225,900 11,672 32,865 32,018 - - - - 43,593 45,652
36 229,900 11,610 39,314 39,378 - - - - 41,504 42,824
37 284,200 16,000 39,781 40,410 - - - - 43,650 46,459
38 411,300 16,395 55,136 57,933 71,152 67,612 68,421 73,798
39 479,200 9,280 74,861 85,642 74,077 70,861 - - - -
40 387,600 8,495 - - - - 73,695 80,556 87,140 91,994
41 395,900 7,562 100,120 100,120 90,763 84,758 70,832 75,830
42 158,900 4,841 - - - - - - - - 83,868 83,402
43 363,600 10,676 111,648 102,868 75,102 74,757 - - - -
44 414,800 8,723 69,360 80,960 100,722 101,811 - - - -
45 382,700 9,244 86,369 119,884 - - - - - - - -
46 610,050 12,278 99,148 114,817 - - - - - - - -
極印の圧印枚数は、極印鋼材の材質、熱処理、形状、極印面の勾配、模様の高低及び凹凸の配置、そして、
円形の材質、熱処理、直径、厚さ、耳の形状、圧印機への上下極印の取り付け状況、圧印速度、圧印面の
アレの判断等多数の要素によって支配され、同じ貨幣の圧印命数でもバラツキがきわめて大きい。


参考文献:造幣局百年史(資料編)







手変りの着眼点

 手変りは、微細な違いを見つけては「1人で悦に入る」ようなところがあって、どの程度
の差があれば「手変り」と言うのか、いまだ明確な基準が有りません。

 ここでは、こんな所に注意すれば、手変りが見つかりますよ、
    という
「手変りの着眼点」ならびに「手変りの代表例」を示します。

 これらは、全ての製造年にある訳では無く、1つの製造年に、この中の幾つかが有る
ということです。また、変化が微小過ぎて分かりにくいものも有ります。

    手変りを見つけるのには、肉眼では難しく10倍以上のルーペが必要となります。また、1度に、
    10枚程度をスキャナーで取り(600dpi程度)拡大して、見比べるのが分かり易いと思います。
色々なルーペを買いましたが、上段の中央のもが使いやすいです。


(5 円 黄 銅 貨)

部         位    手 変 り の 着 眼 点   
(隙間・離れ)
 1=ヒゲと米粒:接触、離れ
 2=稲茎と波線:小離、大離
 3=歯車と五:小離、大離
 4=歯車と波線:小離、大離
 5=五と波線:小離、大離

(五の形状)
 6=形状:>(三角)型、台形型
 7=形状:>(三角)型、半丸型
 8=形状:縦長型、方形型

(その他)
 9=米粒:楕円形、丸型
10=波線:長い、短い
11=波線の両端部:超鋭角、鈍角
    波線の長さ:長い、短い
(文字)
 1=本・縦棒:太い、細い
    他に縦棒頭部:左傾斜有り
 2=日・横棒とロ:小離、大離
 3=昭と和:小離、大離
 4=禾と口:小離、大離
 5=口の形状:横長、方形
 6〜8=文字:太字、細字

(双葉の形状)
 9=茎:太い、細い、他にも有り
10=葉:広い、狭い
 



文字他の手変り
(写真隅の数字は、製造年を示す)

隙間:広い、狭い 、 波線:長い、短い 他


禾の第5画短い  、 口部:横長、方形

禾の第5画長い  、 口部:横長、方形


双葉の手変り

双葉の葉:広い、狭い  、 茎:太め、細め








(1 0 円 銅 貨)

部         位    手 変 り の 着 眼 点   
1=先端部:角型・丸型
2=点の形状:長・短、太・細
3=文字形:太・中・細字、
   彫り型:角彫・丸彫字
4=隙間:広い・狭い
5=隙間:広い・狭い、点:有・無
6=点とロの隙間:有・無
 1=鳳凰全体:大・小
    頭部形状:平常・変形 
    目:有・無
 2=鳳凰形状:色々有り
 3=足型:長・短、離れ:有・無
 4=大棟:太・細、1本・2本
 5=左右降棟:同長、左長・右短
 6=垂木:太・細、長・短
 7=隙間:大・中・小
 8=裳階枕:有・無、大・小
 9=階段耳石切目:有・無
10=左石積み切目:有・無
  (左右隅楼共通)

 1=宝珠●:大小、ずれ:大・小
 2=宝珠高さ:大・小、左右の差
 3=左宝珠切目:有・無
 4=右凹●:大・小、ずれ:大・小
 5=切目の長さ:大・中・小
 6=隅棟形状:色々
 7=軒先凹●:有・無、大・小
 8=軒先線形:太・細、1本・2本
 9=軒先形状:コ型・>型
10=翼楼大棟線形:太・細
11=翼楼瓦縦線:長・短
12=隙間:大・小
13=前楼破風形状:階段型・楔型
14=前楼破風切目:有・無



部位名称については、文化財探訪クラブ3・寺院建築(山川出版社)等参照



隅楼の手変り
(写真隅の数字は、製造年を示す)
宝珠の切目有無、隅楼隅棟形状

 
階段の手変り

階段耳石上部の切れ目の有無を示したものである。


隙間・宝珠等の大小の手変り

隙間の1例で、大・中・小を示す、隙間の変化は無数存在する。

宝珠頂部の●の大・中・小、隅棟の形状変化を示す、大きさ位置・形状の変化は無数存在する。


裳階の枕の手変り

右裳階・軒先下の枕の有無を示したものである。

左裳階・軒先上下の枕の有無を示したものである。


文字の手変り

文字の手変り           文字左右の唐草の違い







よ り み ち


 縁部(外周部)、文字、建物、唐草等の形に着目して下さい、これはどうして、このよう
な形になるのかよく分かりませんが、
極印の磨耗の度合い、極印をプレス機にセットした
ときの僅かな傾き、圧印時 の圧力差・・・等によっても起こると思われますが・・・


NO 製造年:平成元年〜平成14年   備     考  
@  これは、たくさんの貨幣の中
から探した、縁部が比較的き
れいな方の貨幣です。

 それでも、上下に彫りの深
い・浅いが認められます。
A  これは、上下で縁部の形状
がだいぶ違います。

 また、下部に見られるバリ
のようなものは、どうして出来
るのでしょうか・・・

 左右の唐草模様が、上の@
と比較するとだいぶ細くなって
います、手変りかどうか迷うと
ころです。
B  これは、左右の縁部の形状
が3本線に見えます

 左右の唐草模様が、上のA
と比較するとさらに細くなってい
ます、手変りかどうか迷うところ
です。
C  これは、下部の縁部形状が
だいぶ「丸み」をおびています。
 
D  これは、日本国等の文字お
よび建物が「丸み」を帯びてい
ます。


 刻印の磨耗が進んでいるの
でしょうか・・・?
E  これは、下部の縁部形状が
がさらに丸みをおびています。

 平らの部分にも、ざらざらが
目立ちます、極印の磨耗が進
んでいるのでしょうか・・・? 


5円手変り@ 10円手変り@ 100円手変り@ 500円手変り@



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